25歳で脱サラし、「天才」落語家・立川談志に弟子入りするまで
大事なことはすべて 立川談志に教わった第1回
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まずは、落語家になるにはどうしたらいいかというところから、説明しましょう。
不況が長引くご時世からか、「落語家になりたい!」という奇特な人がどうやら増えているようです。まあ、自分も二十数年前はそんな若者だったのですが。パナソニックが大リストラを迫られたりする世の中です。大企業とて安心とは言い難い経済状況では、自棄になる気持ちもよくわかります。
むろん、すべてがそんな理由ではないのでしょうが、組織に属していると「好きなことをしゃべってお金がもらえる」世界にかぎりない憧憬を抱くのでしょうね。他人の芝生は、とことん青く見えるものなのかもしれません。
さて、東京で落語家になりたいという希望を持った場合、まずはおおむね「落語協会」「落語芸術協会」「五代目円楽一門」、そしてわれらが「立川流」、この四団体の「真打ち」とよばれるランクの落語家に入門しなければならないのです。「円楽一門」はともかく、「落語協会」と「落語芸術協会」という二大メジャー団体に比べれば、「立川流」はマイナー団体、インディーズであります。自虐的に「立川流は落語界の北朝鮮」と呼んだりもしているくらい、生前の師匠談志は弟子に厳しい修業を強いることで有名でした。
そうなんです!「弟子入り」とは、まず「修業」。
修業とは、ズバリ言えば「地獄」なのです。くわしくは、のちのちたっぷり語ります。